2021-07-01
アイリッシュ【0118夜】ラベルにあしらったアイルランドのドルメン
ドルメン、日本語で支石墓と訳される石の墳墓のことは、遠い昔に世界史の教科書で習った記憶がある。たしかフランスのブルターニュ地方のものだったと思われるが、写真も載っていた。ドルメンはフランスに限ったことではなく、広く西ヨーロッパを中心に分布している。語源はブリトン語で、『石のテーブル』を意味しているという。もちろんアイルランドにも数多く残っており、その数2,000とも3,000とも言われる。もっとも有名なのは西部のバレン高原のもので、ドルメンというと、よくバレン高原が登場するが、一度だけ、ウイ文研のオリジナルボトルのラベルに、ドルメンの写真を使ったことがある。バレン高原のものではなく、クーリー蒸留所があるクーリー半島の付け根、ダンダーク郊外の有名なゴルフ&リゾートホテルのコース内にあるドルメンだった。
ドルメンは新石器時代から青銅器時代のB.C. 5000~3000前後につくられた支石墓で、B.C. 2000年以降はつくられなくなった。もともと小規模な墳墓で、土などで覆われていたが、長い年月で石組みだけが露出したものだ。古くはテーブル状に巨大な石が水平に置かれていたというが、アイルランドの東部で見つかるものは三角柱の不思議な形をしたものが多い。“妖精が造るウイスキー”として、以前紹介した(0050)、キルオーウェン蒸留所もクーリー半島の近くで、近くの牧草地の中に小さなドルメンがあった。
歩いて行ける距離だったので見に行ったが、ダンダークのものに比べてはるかに小さく、支柱石も低いことから豪族の墓ではないと考えられている。3角形の石窟の向いている方向が西向きで、そこから黄泉の国に魂が戻るのだと、案内してくれたキルオーウェンの人に教えられた。キルオーウェンの近くには、ほかにもいくつか同様のドルメルがあるが、それらも向いている方向は同じだという。ちなみにバレン高原は岩だらけの台地で、そこには有名なプールナブローンのドルメンなどが多く存在する。
キルオーウェン蒸留所の近くにあったドルメン。 ドルメンをラベルにあしらったウイスキー文化研究所のオリジナルボトル。 一覧ページに戻る