2021-06-28
スコッチ【0115夜】オリジナル版画の謎解き② ~ラガヴーリン
「キンダルトン3兄弟」の次はラガヴーリン。ラガヴーリンといえば“ラガヴーリン・スカロップ”、ホタテ貝が有名だが、どうもホタテをシンボルとすることは、しっくりこない。貝をラベルにあしらっている、あるいはシンボルとしているウイスキーというのは聞いたことがない。あまり絵にならないからだろうか。
ラガヴーリンのホタテは日本と違って養殖しているわけではなく、天然のホタテで、ダイバーが潜って捕獲する。蒸留所の温排水を長いパイプを使って、ラガヴーリン湾の底に放出していることで、ホタテが集まるのだと地元の漁師に聞いたことがある。何度かホタテ料理を食べたことがあるし、今から12~13年前に一週間ボウモアのコテージを借りて自炊していた時には、むき身のホタテを2キロほどもらって、味噌汁にもしたし、カレーにも入れて豪華なシーフードカレーを作って楽しんだ。食べたら、この上なく美味だが、ちょっと版画やトートバッグにするのは…。そこで考えたのが2羽の白鳥である。
ラガヴーリン湾はアザラシもいるし、ホタテもいるが、どういうわけか昔から白鳥が飛来することでも知られてきた。数は多くないが、ラガヴーリンの白い建物を背景に、白鳥が泳ぐ姿は、実に絵になると昔から思っていた。湾ごしに蒸留所を見ることができるのは、湾の入口にダニヴェイグ城があり、そこから蒸留所を振り返ることができるからだ。ダニヴェイグ城は13~14世紀に建てられた、かつての砦で、アイラ島の君主、ロード・オブ・ジ・アイルズが、沖合を航行する船に睨みをきかせていた、海の出城だった。今は完全に廃墟となっているが、この入江の突端にあるダニヴェイグ城から見るラガヴーリンの姿は、まるで海に浮かぶ不沈艦のようで、見飽きるということがない。しかも運が良ければ、ラガヴーリンの前を泳ぐ白鳥の姿を見ることもできるのだ。
湾ごしにのぞむラガヴーリン蒸留所。文中に登場したロード・オブ・ジ・アイルズについては、「0053 アイラ島のグレートシール」で2話にわたって詳しく紹介している。 2羽の白鳥とコラボしたラガヴーリン蒸留所をモチーフにしたウイ文研オリジナル版画。 一覧ページに戻る