2021-06-01
その他【0109夜】「大全シリーズ」のルーツ
5月18日に私の“大全シリーズ”の6冊目となる『完全版シングルモルトスコッチ大全』が出版された。定価4,400円(税込)、初版刷り部数6,000である。全326ページのオールカラーとはいえ、この値段でこの部数は、出版不況の続く現在では異例のことだと思う。いろんなところで広告も出始めたし、各誌で書評も載り始めた。『週刊新潮』では、私の大全をバイブル代わりにシングルモルトを飲んでいるという、作家の香納諒一さんが1ページの書評を書いてくれている。その大全シリーズの初版となったのが1995年の『モルトウイスキー大全』で、以来モルトウイスキーが今回のを入れて4冊、ブレンデッドが2冊の計6冊出している。
95年に最初の本を出す時、私の中でタイトルは『…大全』という風に決まっていた。それは私がバイブルとしていた釣りの本が、『釣魚大全』で、そこから付けたいと思っていたからだ。『釣魚大全』、The Compleat Anglerは、イギリスのアイザック・ウォルトンが書いた釣りの指南書で、初版は1653年である。以来イギリスだけでなく全世界で多くの版が出され、釣り師をしてこの本を知らないことは恥ずべきこととまで言われるようになっている。私がもっとも釣りに熱中したのは1987年から93年までのイギリス滞在時代で、ウォルトンの本の舞台となった川や湖を実際に尋ね歩き、同じ水辺で糸をたれることもした。ウォルトンが眠るウィンチェスター大聖堂も訪れ、その墓やステンドグラスも撮っているし、いくつかの書物の中で、ウォルトンのことについても書いている。まさに、この本との出会いがなければ、『モルトウイスキー大全』という書名は思いつかなかっただろう。
その『釣魚大全』の昭和11年の訳本(平田秀木、国民文庫)を今回、偶然にも手に入れることができた。兵庫県丹波市の本上田邸のオーナーUさんからで、ウイスキーと直接関係ないが、私の大全シリーズのルーツともいえる本なので、今回紹介した。
『釣魚大全』の著者、アイザック・ウォルトン。生まれはイングランドのスタッフォードだ。 一覧ページに戻る