2021-05-24
アイリッシュ【0106夜】ミンククジラがシンボルの蒸留所
蒸留所やブランドのシンボルというと、動物が使われることが多いが、アイリッシュではあまり聞いたことがない。例えばスコッチではフェイマスグラウスの雷鳥やホワイトホースの白馬、ブラック&ホワイトの2匹の犬など、動物をシンボル、あるいはブランド名としたものが多い。これらはブレンデッドだが、シングルモルトには旧UD社の“花と動物シリーズ”があり、カワウソやアナグマ、ノロジカ、イルカなどが使われている。中でも一番多いのが鳥類で、まるで愛鳥図鑑のようでもあった。
アメリカでも、ケンタッキーバーボンのワイルドターキー(七面鳥)やバッファロートレース(野牛)が有名だが、アイリッシュには、ほとんどない。ミドルトン蒸留所が造るレッドブレストは有名で、これは愛らしいコマドリをシンボルとしていたが、最近になって珍しい動物をシンボルとして使っている蒸留所が現れた。それが2018年にオープンしたクロナキルティである。同蒸留所がシンボルとしているのは、なんとミンククジラである。理由はクロナキルティを創業したスカリー家は代々続く農家で、クロナキルティの郊外、大西洋に突き出たギャリーズヘッド(岬)周辺に広大な大麦畑を所有し、そこから沖合を泳ぐミンククジラを見ることができるからという。しかもそのシンボルは全身像ではなく、尻尾のみというユニークなもの。蒸留所はクロナキルティの中心にあるが、そのミンククジラの尻尾のオブジェが蒸留所の入口に建てられている。
ミンククジラは小型のクジラで、体長はシャチと同じくらい。日本では沿岸捕鯨や調査捕鯨の対象となっているが、太平洋にいるミンククジラと大西洋のそれは別種(亜種)だという。アイルランド沖で見られるのはキタタイセイヨウミンククジラ、英名でミンキーホエールである。それにしても、日本人がミンククジラを食べることを知ったら驚くこと間違いなし…。
ミンククジラの尻尾が目を引く「クロナキルティ シングルバッチ ダブルオーク」。ウイスキーだと、これの他に2種類のラインナップが出ている。また、ホエー(乳清)から造られたベーススピリッツを使った「ミンクジン」も販売している。”ホエール”と掛けているのか…。 一覧ページに戻る