2021-05-13
アイリッシュ【0101夜】海藻を食べる人々のジン…
このコロナ禍の中でもクラフトジンの人気は高く、全世界で新しいジンが続々と誕生している。スコティッシュ・ジン協会がリストアップしているスコットランド産のジンは、すでに200を超えているし、クラフト蒸留所では、まずジン造りからスタートというところも多い。2015年にハリス島にオープンしたハリス蒸留所もそうで、シュガーケルプ、昆布をボタニカルに使った「アイル・オブ・ハリス・ジン」は、世界中で人気となっている。ジンにコンブ…と、思った人も多かったが、しかし上には上がいる。
アイルランド北西部、ドニゴール州に2017年にオープンしたスリーブリーグ蒸留所が造っているのが、「アン・デュラマン」というアイリッシュのジン。アン・デュラマンとはゲール語で『海藻をつむ人』の意味で、実はドニゴール州では海藻を食べる習慣があるのだ。アン・デュラマンとは職業的に海藻を取る人々のことで、アイリッシュバンドのクラナドのアルバムには、このタイトルをつけた曲があるという。クラナドはドニゴールの出身で、1980年代から90年代にかけて、アイリッシュトラッドのグループとして人気を博した。日本では知る人ぞ知るだが、“ケルトの歌姫”といわれるエンヤの兄や姉が結成したグループといったほうが、分かりやすいかもしれない。エンヤは世界的なヒット曲を連発し、一時期世界中でブームになった。当時、父が経営していたパブがドニゴールにあり、よくエンヤも来ていたという。
スリーブリーグのアン・デュラマンは、ドニゴールで取れる5種類の海藻をボタニカルに使ったもので、日本の昆布、ワカメ、岩のりの仲間だろうか。海藻の知識がないと、チンプンカンプン。しかもゲール語で言われたら、お手上げだ。ボトルデザインも凝っていて、アイルランドやイギリスでは人気だというが、日本には一度も輸入されたことがない。日本でも売られたら面白いと思うのだが。なんせアイルランド人は同じ海藻を食べる民族として、日本人に親近感を持っているのだから。
デュラマンのボトル。ケルト伝統の装飾文字で、中世のビネガーの瓶を模しているそうだ。 フォーサイス社が作った特注のジン用スチル。 高さ600mを誇るスリーブリーグの崖。写真中央左に写る船が、まるで蟻のように見えるほどの壮大さだ。 一覧ページに戻る