2021-03-22
スコッチ【0081夜】ラベルに休眠期間を明記する王様のウイスキー
大全のテイスティングをやっていて、これはキャップではないが、もうひとつ面白いものを見つけた。それはロイヤルブラックラのラベルである。
ブラックラ蒸留所は1812年にキャプテン・ウィリアム・フレイザーによって、ネアンのコーダー城の近くに創設された。フレイザーはもともとインドの駐在武官で、リタイアしたのち故郷にもどり蒸留所をオープンしたが、その20年後の1833年に、国王ウィリアム4世が近くを訪れた際にウイスキーを献上し、王室御用達、ロイヤルワラントを授けられた。以来、ロイヤルをつけることを許されているが、現在ロイヤルと付くのはこのブラックラと、ロイヤルロッホナガーの2つしかない。
それはともかく、ブラックラにワラント(勅許状)を授けたウィリアムという王様はどんな人物だったのだろうか。ウィリアム4世はジョージ3世の3男として生まれ、13歳の時から海軍に入り、軍人として大英帝国の各地を転戦した。その庶民的な性格もあって、『船乗り王』『庶民の王様』とも呼ばれたというが、兄のジョージ4世が亡くなったことを受け、1830年に65歳で国王となっている(次兄もすでに死去)。国王となってからも、一人でよくロンドン市中に散歩にで、気さくに庶民と接したというから、人気の国王だったのだろう。
そのウィリアム4世とブラックラの創業者フレイザーは同じ軍隊仲間だということもあり、早くからの知り合いだったという。またウィリアム4世は大の酒好きということもあり、ブラックラを王室御用達としたのだと思うが、以来ブラックラはキングス・オウン・ウイスキー、“国王の酒”と呼ばれ人気を博したという。ボトルのラベルにも、そのことが謳われているし、たいそうな紋章も入っている。さらに面白いのが、ラベルの左上に、サイレント期間、つまり休眠期間を明記していることだ。
これを見ると4度の休止期間があったことが分かるが、こんなことを表示しているラベルというのは珍しい。いかにも王室御用達の律儀さと言うべきかもしれない。
ロイヤルブラックラのラベルと、ラベルの左上に記載された休眠期間。ロイヤルブラックラは、現在ジョン・デュワー&サンズ社が所有しており、デュワーズの原酒の1つにもなっている。 一覧ページに戻る