2021-03-19
スコッチ【0080夜】アランとラッセイの不思議なキャップ
大全のテイスティングをしていて、再び面白いキャップを見つけたので、それを紹介。ひとつはロックランザのキャップで、何やら2羽の鳥とスチルが描かれている。ロックランザはアラン島に1994年に創業した蒸留所で(生産開始は95年)、かつてはアラン蒸留所と呼ばれていた。しかし2018年に島の南部にラグ蒸留所を建設したことで、アランはロックランザと改めた。
それはともかく、このキャップを見て思い出したのは、蒸留所の建設がゴールデンイーグルによって中断したという話だった。ゴールデンイーグルは翼を広げると2メートルを超える大鷲で、スコットランドではもちろん保護の対象となっている。実はロックランザの背後の崖の上にはつがいのゴールデンイーグルが棲んでいて、ちょうど工事が営巣の時期と重なり、つがいの子育ての邪魔をしないように工事を中断したというのだ。キャップに描かれているのは、その2羽の大鷲なのだろう。スチルはもちろん蒸留所の象徴だが、アランの蒸留器は確かストレートヘッドのはず。これはランタンヘッドに見えるのだが。
もうひとつは2017年に創業したラッセイ蒸留所のキャップ。これはファーストリリースのボトルのキャップだが、なにやら不思議な図柄が描かれている。1つは樽だと分かるが、もう1つは何?蒸留所のシンボルはラッセイ島のダンカン山だと思っていたが、それではない。しかしヒントはボトルのラベルにあった。
ラッセイ島は太古の時代の火山の噴火でできた島で、火山岩で覆われているが、その上にジュラ紀の砂岩が堆積しているという。蒸留所の仕込水は実は背後の丘の中腹に井戸を掘っていて、その水を使っているが、これは砂岩層によって豊富なミネラルが含まれているという。そのミネラルが酵母の栄養となり、リッチなフレーバーを生む。それと樽の組み合わせが、ラッセイの独特の個性となっている。それを視覚的に表したのが、このキャップの図柄なのだろうか。
アランのラベルとキャップ。囲いの枠はアラン島の形を表している? アイルオブラッセイのラベルにあしらわれている地層の図柄と、おそらくそれをモチーフにしたであろうとされるキャップ。忘れがちだが、水もウイスキーの風味を決める重要な要素で、その水を育てているのは他ならぬ大地である。 一覧ページに戻る