2021-03-16
アイリッシュ【0078夜】聖人が描かれたアイリッシュウイスキー
アイルランドはセント・パトリックやセント・コロンバなど、多くの聖人を生んだ国としても知られているが、聖人の姿をラベルにあしらったのは、このグレンダロッホくらいかもしれない。グレンダロッホは2011年に誕生したクラフト蒸留所で、ダブリンから車で1時間ほど行った、グレンダロッホ国立公園内に所在する蒸留所だ。
グレンダロッホは多くの観光客が訪れる人気のスポットで、風光明媚な自然もさることながら、ここには西暦6世紀頃に建てられた、初期キリスト教の教会群があることでも知られている。それらの教会群を建てたのがセント・ケヴィンで、彼はもともとウィックロー地方の王家の生まれだが、王位を継ぐことを拒否。グレンダロッホの山奥に隠れ住み、修業に明け暮れたという。
セント・ケヴィンは当地に7つの教会を建てたといわれるが、そのうちのいくつかは現存し、中でもセント・ケヴィン教会と、そのそばに建つラウンドタワーは、第1級の建築遺産となっている。グレンダロッホのシングルモルトは7年物と13年物の2種類が出ているが、7年というのはセント・ケヴィンが修業をした年数であり、彼が建てた教会の数にちなんでいる。では13というのは…。
実はラベルをよく見るとセント・ケヴィンが両手をひろげ、湖に立ち込んで祈りを捧げる姿が描かれているが、それぞれの手には、小鳥と卵が描かれている。ケヴィンは毎日、湖に入って祈りを捧げるのが日課だったが、ある日、1羽のツグミ(ブラックバード)が手に止まり、3個の卵を産んでいったという。ケヴィンは、その卵がかえるまでの13日間、そのままの姿勢で水の中に立ちくし、無事ふ化させることに成功したのだとか。以来、アイルランドでは13という数字は吉兆となっているのだ。
まあ、ツグミの卵が13日でかえるのかどうか、その後3羽のヒナはどうしたのかはおいといて、機会があれば、ぜひ飲んでみてはいかがだろうか。
(上)グレンダロッホのラベルに描かれているセント・ケヴィン。その右手にはツグミがとまっている。(下)そのセント・ケヴィンが毎日祈りを捧げていたとされるロウアーレイク。 一覧ページに戻る