2021-03-09
スコッチ【0076夜】バルブレアと謎のピクト族、ピクトシンボル~その②
ピクト族の謎2回目—。通常、先住民族の文化は日本のアイヌ文化などと同様、地名などに、その痕跡が残るものだが、スコットランドの地名の7割以上が、後からやってきた(紀元6世紀以降)ゲール族のものだという。ゲール族もケルト民族の一派で、主にアイルランド島に先住し、やがてキリスト教とともにスコットランドにやってきた。ハイランドのピクト族にキリスト教を布教したのが、聖コロンバで、コロンバは西暦563年にアイオナ島に、そのための修道院を築いている。
さらに言えば、海岸部や港、島には8世紀以降やってきたヴァイキングの地名が数多く残されているのに、紀元前後から約1000年暮らしたピクトの地名が残っていない。現在分かっているのは頭に“ピット”と付く地名くらいで、これは「ピクト人の集落」のことだという。ハイランドの玄関口として有名なピトロッホリーなどが、その例だが、それでもゲール族の地名に比べれば圧倒的に少ない。ヴァイキングの地名に比べても、少数派なのだ。
ピクトのアルバ王国はやがてゲール族のダルリアダ王国、さらにスコット族のスコットランド王国と変わったが、きっかけはスコット族(ゲール語)の王、ケネス・マッカルピンで、マッカルピンは西暦843年にアルバ、ダルリアダ王国を統一し、やがてスコットランド王国としたのだ。その謎の民族ピクト族が残したのが、不可思議なピクトストーンで、そこに描かれたピクト模様は、彼ら以上に不可思議で謎だらけのデザインとなっている。
ピクトのシンボルは20~30のパターンが知られているが、その代表的なのが、ダブルディスクと、Zロッド、Z字の竿(折れた槍の意)などである。さらにピクトのシンボルは2つが組み合わさっている物も多く、このバルブレアがキャップに使っているのも、ダブルディスクとZロッドが組み合わされたものだ。もちろん意味するものはまったくの不明だが、今見ると、まるで宇宙人のように見えなくもない。
バルブレアのキャップとラベルに描かれているダブルディスクとZロッド(おそらく右下が槍先か)。現存するピクトストーンは、その多くがハイランド東海岸に残っており、反対の西海岸やヘブリディーズ諸島ではほとんど見ることができない。そもそもなぜ、ピクト族に関する文化の痕跡がほとんど残されていないのに、ピクトストーンだけは今日に至るまでその形を残してきたのだろうか…。 一覧ページに戻る