2021-02-05
アイリッシュ【0063夜】カモメの卵にワラビー、2代目ルパートの奇妙な生涯~その②
ランベイ島の話のつづき。第2次大戦当時、ロンドンはナチス・ドイツのV2ロケットや飛行機による爆撃に悩まされ、ロンドン市民は防空対策として地下鉄に避難していた。当然、食糧事情も悪くなり、特に育ち盛りの児童の栄養不足が懸念されていた。
そのニュースを知ったルパートは使用人たちにランベイ島のカモメの卵を集めさせ、それをロンドンに送ったのだという。しかし、そのことは不参戦、中立を決めていたアイルランド自由国政府の政策に反する敵対行為と見なされ、ルパートとベアリング家は大戦終了まで、アイルランド追放を命じられたという。いかにもイギリス王党派の、“女王陛下の銀行”といわれたベアリング家らしい逸話で、そのため10数年間、ランベイ島には戻れないという不幸な結果も招いてしまったのだ。
もうひとつ、これも面白いエピソードだが、第2次大戦後の1950年代、ダブリン動物園が飼っていたワラビーを経営難で手放すことになり、それならばということでルパートが、そのワラビーのつがい2頭をランベイ島に引き取ったという。
そのまま島で放し飼いにしたところ、自然繁殖し、60年以上経った現在ではその数が100頭以上になっているのだとか。オーストラリア政府がワラビーの輸出を禁止しているため、今では世界中の動物園が、このランベイ島のワラビーを買いに来るというから、面白い話である。これも“人間嫌いで偏屈”といわれたルパートさんらしいエピソードである。
ちなみにランベイウイスキーには、ランベイ島とベアリング家を物語る数々のアイコンが描かれている。中心となっているのは海鳥パフィンで、そのパフィンがタキシード姿で描かれている。その謎解きについては、またいつかの機会に。
(上)ランベイ島の入口。芝生の上にいる黒っぽい色の生き物はアンガス牛だろうか。(下)島内にあるベアリング家の邸宅。ルパートは、一生のほとんどをここで暮らしていたという。 一覧ページに戻る