2021-01-20
スコッチ【0055夜】ラーグスの戦とラマ教の修行道場…
1263年にスコットランド西岸、エアシャーのラーグスの浜辺で、スコットランド軍とヴァイキングの軍の最後の戦いが行われた。これがラーグスの戦で、当時のスコットランド王はアレクサンダー3世。対するヴァイキング軍の総大将はノルウェー王のホーコン4世。
その前年にスコットランド軍がスカイ島を攻めたことに腹を立てたホーコン4世が、再びヘブリディーズの覇権を取りもどすべく、大艦隊を組織して、スコットランドにやって来たのだ。ヴァイキング軍には、マン島のヴァイキングも合流したが、ホーコン4世率いるノルウェー軍はロングシップ200隻に、兵士は15,000人にものぼったという。
その大艦隊を集結させたのが、クライド湾に浮かぶアラン島のラムラッシュで、目の前には“聖なる島”と名付けられたホーリーアイランドが浮かんでいる。対岸のエアシャーとの間に浮かぶ大きな島で、その島影に隠れるように船隊を配備させた。おそらくマン島からの合流を待っていたもの思われるが、出陣が夏から秋にずれ込んだ。伝説によると、その年の秋は天候不順で、嵐が何度も襲い、本土上陸をそのつど阻んだのだという。まるで、その11年後に起きた日本の鎌倉時代の蒙古襲来のようだが(1274年)、ゲール(嵐)が神風のように吹いてヴァイキング船団は散り散りになり、スコットランド軍に大敗を喫してしまった。ちなみに『アザミの伝説』は、この時に誕生しているが、それは、また別の機会に。
ホーコン4世は退却を決め、一度オークニー島にもどり(当時はヴァイキングの島)、翌年春の遠征のため休息を取っていたが、その年の暮れ、12月にカークウォールの聖マグヌス大聖堂の司教館で病死してしまった。そのことで、日本の元寇のような2回目の遠征は永久に潰えてしまい、400年以上続いたヘブリディーズ諸島やマン島のヴァイキング支配も、終わりを告げたといわれている。
ちなみにアラン島のホーリー島は、現在チベット仏教のラマ僧たちが修業の場としていて、寺院(ゴンパ)も建てられている。1980年代に、島ごとラマ僧たちが買いとったのだという。ラマ教を信仰するハリウッドスターのリチャード・ギアも訪れたことがあるのだとか。
(上)アラン島。前方にそびえるのは、アラン島最高峰(874m)のゴートフェル。ホーリーアイランドは近くにあるのだが、入り江のくぼみに隠れてしまっている。Googleマップにも載っている島なので、位置を確認してみてほしい。(下)アラン蒸留所。年間10万人以上の観光客が訪れている。 一覧ページに戻る