2021-01-18
スコッチ【0053夜】アイラ島のグレートシール~その①
『ウイスキーガロア』でアイラ島特集をやった時(2020.vol.21)に、オリジナルピンバッジ3種を作り、それを販売した。そのうちの1つ、アイラ島のグレートシール(大紋章)について、今日は紹介したい。
不思議な形をした船の上に4人の人物が乗っているのが、アイラ島の大紋章で、この船はヴァイキングのロングシップを改造した、ナイベイグという船である。実はヴァイキングは航海術に長けた民族で、西暦8世紀から12世紀にかけて、シェットランドやオークニー、そしてヘブリディーズ諸島からアイルランド、イングランド、さらに遠くフランス、スペイン、そして地中海のシチリア島まで遠征していたことが知られている。それを可能にしたのが、ロングシップという、当時最も進んだ船と、その航海術だった。
多くは今のノルウェー、スウェーデン、デンマーク(これがヴァイキングの故地)で造られた物だが、流線形の船体と直進性を高める大きな竜骨、そして1本マストの帆に風を受け、最高時速22~25㎞に達したと推測されている。当時の船としては最速で、これだとノルウェーのベルゲンからシェットランド、オークニーまで1日半で到達できることになる。シェットランド、オークニーはもともとヴァイキングが定住した地で、アイラ島はヘブリディーズ諸島の最南端。そこからアイルランド海に入って、アイルランド、イングランド本土へとヴァイキングは南下して行った。
アイルランド海に浮かぶマン島はヴァイキングの島として有名だが、そのマン島を拠点とするヴァイキングの支配から逃れようと立ち上がったのが、アイラ島の領主たちだった。彼らが頼ったのが、当時アーガイル地方のキンタイア半島を治めていた豪族のサマーレッドである。サマーレッドはヴァイキングとゲール族の血を半々に受け継ぐ人物で、名前はヴァイキング風の名前を名乗った。これは『夏の航海者』を意味していて、ゲール語風の名前より、ヴァイキング風の名前のほうが勇ましく、周辺に睨みがきくと考えられていたからだろう。(0054につづく)
ウイスキー文化研究所のオンラインショップで販売中のオリジナルピンバッジ。左下のデザインの由来については、次回(0054)の千夜一夜で紹介するので、ぜひご購入…いや、デザインをよく覚えておいてほしい。 一覧ページに戻る