2020-12-23
スコッチ【0042夜】オークニーのロウソク岩とクリス・ボニントン
オークニー諸島はスコットランド本土の北にある大小70あまりの島からなる群島だが、そのオークニーのホイ島に、イギリスで最も有名なロウソク岩がある。それがオールドマン・オブ・ホイで、ホイ島の西岸にまるで荒野に佇む老いた男のように海から屹立している。高さは137メートルと、それほどでもないが、サーソーとストロムネスを結ぶフェリーの船上からもよく見え、オークニーの人気の観光スポットとなっている。
これをラベルにあしらったのが、ボトラーズのブラックアダーが出す「オーカディアン」ウイスキーで、中身はオークニー島産のシングルモルトである。オークニーのシングルモルトといえばハイランドパークとスキャパの2つしかないが、スキャパはボトラーズに出回ることはほとんどないので(かつてはGMがヴァイキングのロングシップをあしらったラベルで出していたことがある)、ほぼハイランドパークと言って間違いないだろう。
もともとスコットランドでは知られたロウソク岩だったが、一躍全英中に知られるようになったのは、1966年にこの岩が初登頂されてからだ。初登頂に成功したのはクリス・ボニントンで、ボニントンはイギリスが生んだ傑出したクライマーの一人。ヒマラヤに17度遠征し、1975年にはエベレスト南西壁の初登頂にも成しとげている(この時は遠征隊長として)。1967年には、このオールドマン・オブ・ホイの登頂をBBCがドキュメントし、それを放送したことで大きな話題になった。数々の遠征隊を組織し、初登頂を成しとげたことで大英勲章(CBO)も受賞し、現在はナイトにも叙せられている。卓越したリーダーとして多くの企業向けセミナーでも人気№1だった。
実はロンドンで日本語情報誌を作っている時に一度だけインタビューさせてもらったことがある(1990年)。当時ボニントン氏はナショナルトラストという世界最大の自然保護団体の湖水地方の代表委員でもあり、湖水地方に住んでいた。もちろんインタビューはナショナルトラストのことを聞くためだったが、今でもその温厚な人柄が忘れられない思い出となっている。
ハイランドパーク蒸留所と、ブラックアダーの『オーカディアン』。ボニントン氏が登頂に成功した南西壁は、エベレストでも最難関ともいわれる過酷なルートだ。 一覧ページに戻る