2020-12-09
スコッチ【0033夜】釣り好きとして知られたクイーンマザー
イギリスでついに新型コロナウイルスのワクチン接種が始まったというニュースが報じられているが、そのニュースの中でエリザベス女王とフィリップ殿下の映像が出てきた。女王は御年94歳、殿下は99歳ということだが、お二人ともお元気そうである。女王が戴冠したのは1952年のことだから、もうじき在位70年を迎える。これはヴィクトリア女王の64年を抜いて、歴代1位である。
イギリスのロイヤルファミリーが釣り好きであるのは、意外と知られていない。もちろん今はやっていないと思うが、女王もフィリップ殿下も釣りをたしなみ、毎年夏に訪れるバルモラル城では、敷地内を流れるディー川で釣りをされていた。ディー川はハイランドの3大河川のひとつで、スペイ川、テイ川に次ぐサーモンリバーでもある。ロイヤルファミリーがやるのは、このディー川でのサーモンフィッシングで、腰のあたりまで川に立ち込んで、長いダブルハンドのサーモンロッドを振るう。
そのロイヤルファミリーで一番の釣り好きといわれるのが、エリザベス女王の母君、クイーンマザーであった。彼女の生まれは1900年で、もともとスコットランド貴族の出。それもあってか、サーモンシーズンの間はほとんどバルモラル城に滞在し、サーモンフィッシングに興じたという。映像も残されているが、80歳の誕生日の時にファミリーからプレゼントされたのが、ディー川の畔の、プライベート用の釣り小屋だったというから、筋金入りだ。そのクイーンマザーに幼少の時から手ほどきを受けたのがチャールズ皇太子で、スコットランドの河川で腰まで急流につかり、サーモンロッドを振るうその姿が、たびたび新聞でも紹介されていた。
ちなみに、この城の隣にあるのが1845年に創業したロイヤルロッホナガー蒸留所で、ここはディアジオ所有の28蒸留所の中で、最も小さい蒸留所として知られている。ロイヤルと付いているのは、ロイヤルファミリーとの深い関係に基づいている。クイーンマザーが亡くなったのは2002年(享年101)で、彼女は19世紀、20世紀、そして21世紀の3世紀を生きた初めての王族であった。
(上)英国王室の夏の休暇地のバルモラル城。2006年に公開された映画「クイーン」の中では、エリザベス女王がこの城で朝食をとっているシーンがある。(下)ロイヤルロッホナガー蒸留所。「ロッホナガー」とは、ゲール語で「岩の露出した湖」の意。 一覧ページに戻る