2020-12-07
スコッチ【0031夜】名曲アルバムにものるローモンド湖の唄
前回『スカイ・ボート・ソング』について紹介したが、もう1つ、カロデーンの戦いをモチーフに作られた民謡が『ロッホローモンド(Loch Lomond)』、ローモンド湖の唄だ。これはボニー・プリンス・チャーリーと共にイングランドに向かって進軍したハイランドの若者2人が、イングランド軍との闘いで、1人は戦死、1人は捕虜となったが、その後、許されて故郷に帰ったことに想を得ている。
冒頭の歌詞は“ユール・タック・ザ・ハイロード・アイル・タック・ザ・ローロード”(You’ll tak the high road, and I’ll tak the low road)で始まる。takはtakeのことで、お前はハイロードで、俺はローロードを通ってローモンド湖へ帰ると唄われている。ハイロードというのは生きた人間が歩く道で、ローロードというのは死者が通る道のことだ。これはケルトの妖精伝説で、遠く故郷を離れて亡くなった者は、妖精が掘った地下の道で魂をふるさとに帰すと伝えられている。つまり無念のうちに死んだ若者が、生きて帰る友人に託した歌、そして手紙という体裁をとっている。それは故郷に残してきた恋人に宛てた手紙で、もう二度とこの世では逢えないのだという心情が綴られている。NHKの世界名曲アルバムにも選ばれている曲で、18世紀以来、世界中の多くの人に愛唱されてきた。
ローモンド湖はグラスゴーの北にある湖で、面積は71㎢。これはスコットランド最大で、ネッシーで有名なネス湖よりも大きい。大変美しい湖で、東側には有名なローモンド山がそびえている。このローモンド湖の唄では、恋人や友人とローモンド湖畔の、ローモンド山の麗で楽しく遊んだ情景が、情感たっぷりに描写されている。この湖は、大小56の島が浮かぶことでも知られていて、そのうちの最大の島がインチマリン島だ。
インチとはゲール語で島のことだが、この島をブランド名としたのが、ロッホローモンド蒸留所のインチマリンである。特殊なストレートネックのスチルで蒸留したノンピートのシングルモルトで、ぜひ、ロッホローモンドの曲を聴きながら、飲んでみてほしい…。
(上)ローモンド湖と、奥に臨むローモンド山。(下)インチマリンを蒸留するストレートネックのスチル。 一覧ページに戻る