2020-12-01
スコッチ【0028夜】M・クーブレイのシングル・シングル・ベアバーレイ~その②
ミシェル・クーブレイ氏が、オークニー産のベア大麦の仕込みを依頼したのが、南ハイランドのエドラダワー蒸留所である。当時エドラダワーは同じフランスのキャンベルディスティラーズ社が所有していて、頼みやすかったということもあるのだろう。エドラダワーの当時の仕込みはワンバッチ麦芽1トン(現在は1.1トン)。これはもちろんスコッチ最小で、5回に分けて仕込みを行った。マッシュタンは100年以上使い続けている旧式のプラウ&レイキ。麦汁を冷却する熱交換器は、モートンタイプのオープンワーツクーラー。発酵槽も2基しかない。もちろんクーブレイ氏も立ち合いながら、自らも麦芽のしぼりカス、ドラフのかい出しを行ったという。蒸留はスコットランド最小といわれた2基のスチルで、冷却はこれまた旧式の屋外コンクリート製ワームタブ。なにからなにまで、100年前と変わらぬ姿だ。
結局、5トンの麦芽から造られたこのベアのニューポットはシェリー樽3樽分だったと記憶する(5樽という説もある)。当時の優良品種であるゴールデンプロミスなら、麦芽1トンあたり約370~380リットル。これは100%アルコール換算なので、63.5%の樽詰め度数にすると、シェリーバットで1樽半、5トンであれば7~8樽詰めることが可能な計算だが、それが3樽ということは、ベアの収量は半分の200リットル前後ということになる。それだけベア大麦はデンプンが少なく、ウイスキー造りは難しいのだ。
しかしスコッチと言うためには、ここから3年スコットランドで熟成させないといけない。クーブレイさんはそのままエドラダワーで3年間置かせてもらい、その後、それをボーヌの自社セラーへ持って行き、そこでさらに10年以上熟成させた。これがシングル・シングル・ベアバーレイで、確か最初のリリースは10年物だったと記憶する(日本では14年物が最初のリリースか)。「スコッチの風味の95%は樽とその熟成で決まる」というのが、ミシェルさんの持論で、それを実現させてみせたのが、このボトルだったのだ。ちなみに、この時の樽はミシェルさんが厳選したクリームシェリーの樽だったという。
こじんまりと佇むエドラダワー蒸留所。2基しかないスチルはスコットランド最小といわれた。 一覧ページに戻る