2020-11-27
スコッチ【0026夜】古代品種といわれるベアバーレイ
今回は大麦のお話。ウイスキーの原料となる大麦には二条大麦と六条大麦があることは知られているが、その中間の粗四条といわれるのが、古代品種といわれるベア大麦だ。一説によると5000年くらい前から栽培されているともいい、かつては北ハイランドを中心に、これがウイスキーの原料として使われていた。しかし、今でも栽培されているのは、オークニー諸島くらいしかない。
ベア大麦は寒さに強く、痩せた土地でも栽培できたが、二条や六条に比べてガラス質やタンパク質が多く、アルコール収量が極端に低かったという。現在の優良品種である二条大麦のコンチェルト種だと、そのアルコール収量はトン麦芽あたり、410~420リットルにもなるが、ベア大麦は良くて300リットル、かつてのものは250から270リットル程といわれた。ちなみにこれは「LPA/t」のことで、1トンあたりの麦芽から最終的にどれくらいアルコール(100%アルコール)が取れるかというと数値で、大麦の品種選びの指標となっている。
では、なぜオークニーで今でもベア大麦が作られ続けているのか。実はこれにはオークニー独特の食習慣が関係している。オークニーでは今でも、このベア大麦を粉にして、それで焼いたベアバノックという素朴なパンを食べる習慣があるのだ。バノックはオークニーだけでなく、スコットランド全土でかつては焼かれたパンだったが、今ではオークニーくらいしかない。
さすがに各家庭で焼くということは少なくなったが、たとえばカークウォールの商店街のパン屋では、他の美味しそうなパンと一緒にホットケーキのお化けみたいなベアバノックが普通に売られている。さらにスーパーに行けば、それ用のベア粉まで売られているのだ。ちなみに、このオークニー産のベア大麦を使って、特別なウイスキーを造っているのが、アイラ島のブルックラディ蒸留所である。
18~19世紀のオークニーの民家と、ベア大麦で作ったベアバノック。当時は、この小さな風車で硬い穀物を粉にしていたそうだ。 一覧ページに戻る