2020-11-24
スコッチ【0023夜】シングルモルトブームをつくったクラシックモルトシリーズ
スコッチ業界に君臨したDCL帝国が崩壊したのが1986年から87年にかけてであった。経営難に陥り、お隣アイルランドのギネスグループによって買収されてしまったのだ。その時、蒸留酒部門を統合して生まれたのがUD社、ユナイテッドディスティラーズ社だった。実はギネス社はその前年の1985年にスコッチのベル社を買収し、ブレアアソールやブラッドノック蒸留所を手に入れていたからだ。
そのUD社から88年にリリースされたのが「クラシックモルト・シリーズ」で、これはスコッチの各生産地区を代表するクラガンモア、ダルウィニー、オーバン、グレンキンチ―、タリスカー、ラガヴーリンの6種が選ばれていた。DCL時代はほとんどシングルモルトに力を入れてこなかった同社が、ギネスグループ、UD社となって方針転換。シングルモルトにも関心を寄せはじめた、それが始まりだった。
このクラシックモルトはイギリスだけでなく全世界で話題となり、現在のシングルモルトブームをつくるきっかけとなった。発売から32年経った現在も、6種のラインナップは変わることなく、ボトルデザインもパッケージデザインも、ほとんど変わっていない。唯一グレンキンチ―だけが当初の熟成10年から12年に変更されているくらいだ。
それぞれが代表している地区はスペイサイド、北ハイランド、西ハイランド、ローランド、アイランズ、アイラだが、これを見て気づくのはキャンベルタウンモルトが抜けているということだ。実は当時DCL社はキャンベルタウンにだけ蒸留所を持っていなく、選ぼうとしても選べなかったのだ。その代わりとして選ばれたのがオーバンである。
オーバンはアーガイル地方のキンタイア半島の付け根に位置し、その半島の先端にあるキャンベルタウンとは、同じ海のそばで、そしてブリニー(塩辛い)という特徴が共通していたからだという。当時キャンベルタウンにはスプリングバンクとグレンスコシアの2つしかなく、そのどちらもが、いつ閉鎖になってもおかしくないという状況だったことも、オーバンを選んだ理由だったのかもしれない。
UD社の「クラシックモルト・シリーズ」。左から、ダルウィニー、ラガヴーリン、グレンキンチ―、オーバン、クラガンモア、タリスカー。 一覧ページに戻る