2020-11-20
スコッチ【0022夜】ウイスキーキャット第2弾/バスで旅するネコ
グレンタレット蒸留所のタウザーについては0019で紹介したが、まだまだスコットランドにはウイスキーキャットにまつわる話が、数多くある。タウザーは24年近い生涯で、せっせとネズミを捕ったが、タウザー亡き後、マウザーの職を引き継いだのは孫のアンバーであった。ところが、このアンバーはネズミが嫌いなのか、祖母とは反対に一匹のネズミも捕らなかったという。彼女のお気に入りは売店とレストランで、そこで訪れる観光客にいつも愛嬌を振りまいていた。
タウザーは人になつく猫ではなかったが、そのマウザーとしての驚異的な能力でグレンタレットを有名にし、宣伝にひと役かっていたが、アンバーは別の意味でグレンタレットの人気者であった。そのアンバーに代わって、せっせとネズミを捕っていたのが、アンバーの子のネクターで、ネクターはシャイな性格なのか、人前に出ることは滅多になかったという。職人ですら、ネクターの姿を見ることは稀で、そういえばネクターの写真は一枚もないという。
マル島のトバモリー蒸留所にいたトディという猫も変りもので、しばしばバスに乗って島内を巡っていたという。職人の話なのでマユツバと思ったが、多くの島民がバスの中でトディを見かけ、島内のあちこちの村を散策するトディの姿を島民が目撃している。中にはパブで見かけたという人もいて、話の真偽は分からないが、ウイスキーキャットが蒸留所ばかりにいると思ったら、それは大間違いだという。多くの蒸留所で、ある日突然ネコがやってきて、ウイスキーキャットとなり、またある日突然いなくなって、別の蒸留所でマウザーになっていたりするという。
人事異動は人間の世界の話ではなく、ウイスキーキャットの世界にもあるらしく、かってに蒸留所を変えて、そこのマウザーになったりする。人間と違うのは、異動は上司が決めるのではなく、彼ら彼女らが自由に決められるということである。マル島には蒸留所がトバモリーひとつしかなかったので、そのかわりにトディは自由きままにバスに乗って旅を楽しんでいたのだろうか。
タウザーの孫のアンバーと、トバモリー蒸留所。人間と同じで、猫も様々な個性を持っているのは面白い…。 一覧ページに戻る