2020-11-16
スコッチ【0019夜】ギネスブックに載った世界一のネコ
前々回、ユアン・マクレガーとグレンタレットについて書いたが(0017)、グレンタレットといえば、ギネスブックに載ったネコのタウザーである。タウザーは生涯に2万8899匹のネズミを捕えたことで有名である。
かつてスコットランドの蒸留所では、どこも自分のところで製麦、つまり麦芽をつくっていた。そのため大量の大麦をストックする必要があり、さらにフロアモルティング中に、それらの麦芽を体育館みたいなスペースに広げていたため、ネズミにとっては、まさに天国となっていた。そのネズミ退治のために飼われていたのが“マウザー”と呼ばれるウイスキーキャットである。どこの蒸留所にも、たいてい1~2匹のネコがいて、それらがせっせとネズミを駆除していたのだ。
そんなウイスキーキャットの中で、チャンピオン中のチャンピオンと呼ばれたのが、グレンタレットのタウザーで、23年11カ月という長寿もさることながら、2万8899匹という記録は今も破られていない不滅の大記録である。というか、今はウイスキーキャットを飼うことは法律で禁じられているので、今後未来永劫破られることはないだろう。
タウザーの正確な生年月日は分かっていないが、ネズミを獲り始めてから、蒸留所の職人が毎日それを記録したという。タウザーには、獲ったネズミを所定の場所に置いておくという習性があり、それを職人がノートに付けていったのだ。タウザーは「害獣駆除員」という正式な役職名も与えられ、次第に全英中に、いや全世界に知られるようになった。生前は毎年クリスマスになると、全世界からクリスマスカードやプレゼントが届いたというから、その人気のほどが分かるというもの。
彼女(タウザーは雌猫)が、23歳と11カ月で大往生をとげたのが1987年3月20日のことで、その死亡のニュースはBBCでも流れ、全世界に配信されたというからスゴイ。現在はその偉業を称えて、蒸留所にはタウザーの実物大の銅像が建てられているのだ。
本物と銅像のタウザー。ちなみにタウザーの記録は、一日一匹換算でも約80年要する…。 一覧ページに戻る