2020-11-12
スコッチ【0017夜】ユアン・マクレガーとグレンタレット蒸留所
スコットランド出身の俳優といえば、ユアン・マクレガーを忘れてはならない。ユアンはパース近郊の、クリーフ(クリフ)の出身で、『トレインスポッティング』で一躍有名になった。その後、スターウォーズのオビワン・ケノービ役でいくつかの作品に出ているし、バチカンを舞台にした『天使と悪魔』では、アイルランド出身のパトリック青年を見事に演じていた。また2005年公開の『アイランド』では、成り上がりの青年実業家と、自分のクローン人間の一人2役を演じていて、前者はアメリカ社会で田舎者と見られるスコットランド訛りを、後者はきれいなクイーンズイングリッシュを喋っていた。
そのユアン・マクレガーの生まれ育ったクリーフの郊外にあるのが、グレンタレット蒸留所である。タレット川の上流部にあるためその名が付いたが、ここは1775年創業と、現存するスコッチの蒸留所としては最古を誇る。規模はいたって小さく、ワンバッチの仕込みサイズは僅か1.1トン。マッシュタンはオープントップの昔ながらのもので、驚いたことにレイキなどの撹拌装置はついてなく、木の棒を使って職人が手作業で、マッシュを撹拌する。もちろんドラフ(麦芽カス)のかい出しも手作業だ。発酵槽も昔ながらの木製だし、ポットスチルも初留・再留2基しかない。意図したわけではないだろうが、まるで現在のクラフト蒸留所の先駆けのようなスタイルである。特に手作業のマッシュタンは、容量は異なるが、2008年に操業を開始した、日本の秩父蒸溜所と同じである。
長くエドリントングループが所有していて、同社のフェイマスグラウスのホーム蒸留所となっていたが、2018年にスイスのラリック社が買収。ラリック社は高級クリスタル製品やインテリアで有名な会社だが、そこがオーナーとなることで、今後、どのような製品が生まれてくるのか、世界中のグレンタレットファンが注目している。
写真は、グレンタレット蒸留所。古き伝統が現在の最先端になっている? 一覧ページに戻る