2020-11-09
スコッチ【0014夜】絶滅危惧種のハイランドヤマネコ
旧UD社の“花と動物シリーズ”で、カワウソをシンボルとしているのがブレアアソール蒸留所だと以前紹介したが、ヤマネコをシンボルとしているのが、北ハイランドのクライヌリッシュ蒸留所だ。今でも一般的に流通しているオフィシャルボトルは、このヤマネコをシンボルとした同シリーズの14年物くらいしかない。
クライヌリッシュがヤマネコをシンボルとしてきたのは、もともと創業者であるサザーランド公爵の副紋章がヤマネコだったからだ。同蒸留所の創業は1819年。領地で穫れる大麦を手っ取り早く換金するのと、当時ハイランドで流行していた“密造酒”に対抗するのが、その目的だった。
ヤマネコをサザーランド家が紋章として使ってきたのは、同地がヤマネコの棲息地だったからだ。実はスコットランドのヤマネコは絶滅危惧種で、その棲息数は300匹にも満たないという(一説では35匹という)。かつてイギリス全土で見られたヤマネコも、今ではハイランドの人里離れた山岳地帯でしか見ることができない。
体長はイエネコの2倍ほどで、大きなものでは1.2メートル、長く厚い毛におおわれているという。ネズミやウサギなどの小動物を餌としているが、絶滅が危惧される一番の原因はイエネコ、ノラネコとの交配だという。そのため、数少ない棲息地の1つといわれる西ハイランドのアードナマッハン半島では、イエネコとノラネコのワクチン接種、去勢が行われ、現在は3200㎢の保護地を設けることに成功しているという。これは東京都の1.5倍ほどの面積だ。ちなみに、この半島の先端近くには、クラフト蒸留所のアードナマッハン蒸留所が2014年にオープンしている。
これまではクライヌリッシュやグレンモーレンジィがヤマネコをシンボルやロゴなどに使ってきたが、これからはアードナマッハンがヤマネコを使うかもしれない。なにしろ、現在考えられる最大の棲息地がアードナマッハン半島周辺なのだから。
写真は、アードナマッハン蒸留所の外観と、おなじみのクライヌリッシュ14年。ボトルではいつでもヤマネコに会えるのだが…。 一覧ページに戻る