2020-10-30
スコッチ【0012夜】カワウソが描かれたボトルとは
旧UD社(ユナイテッドディスティラーズ)の“花と動物シリーズ”で、カワウソの絵が描かれているのが、ハイランドのブレアアソールである。カワウソといえば、一時はイギリスでも絶滅危惧種であったが、1970年代以降の保護活動の成果で、今ではスコットランドやウェールズの海岸部でよく見かけられるようになっているという。
ブレアアソールがハイランド山中のピトロッホリーにある蒸留所にもかかわらず、シンボルとしてカワウソを用いたのは、仕込水として利用している川の名前が、オルトダワー、ゲール語で『カワウソの川』だったからだ。オルトダワー川はスコットランド最長のテイ川の支流で、かつてはサーモンを追ったカワウソが、こんな山中まで生活圏を広げていたのだろう。今はすっかり観光地となったため、ブレアアソールでカワウソの姿を見かけることは少なくなったという。姿が見られるのは、ルイスやハリス、そしてアイラ島などのヘブリティーズ諸島の島々である。
イギリスは動物文学の宝庫だが、カワウソを主人公とした作品で、古典的名著といわれるのが、ヘンリー・ウィリアムソンが書いた『カワウソのターカ』で、これは南西イングランドのデボン州の川を舞台とした小説だった。ヘンリー・ウィリアムソンは『アラビアのローレンス』で有名なT・E・ローレンスの友人でもあり、デボン州ゆかりのノーベル文学賞作家、ジョン・ゴールズワージーらからも高く評価された。ちなみに2008年にロンドンでシップスミス・ジンの蒸溜所を創業したサム・ゴールズワージー氏は、ジョンの親戚筋にあたる人物だ。
ヘンリー・ウィリアムソンはイングランドを舞台にしているが、スコットランドの人里離れた寒村で、カワウソと暮らす生活を描いたのが、ギャビン・マックスウェルの『カワウソと暮らす』(1960年)で、これは今日のカワウソブームの先駆けとなった本といえるかもしれない。とにかく、この本を読めばカワウソのあまりの愛くるしさに、虜になること間違いなしなのだ。
『かわうそタルカ』『カワウソと暮す』ともにネットで購入可能。 一覧ページに戻る