2020-10-28
スコッチ【0011夜】スコットランド最長寿の女性だったジャネットさん
キニンヴィをキーモルトとしたモンキーショルダーの話(0010)がでたついでに、キニンヴィと、オープニングセレモニーのテープカットをした、ジャネット・シード・ロバーツさんについて。
ジャネットさんはグレンフィディックの創業者ウィリアム・グラントの孫娘として1901年にダフタウンで生まれている。グラスゴー大学、エジンバラ大学卒で弁護士となり活躍した人物でもあるが、1950年代以降はグラント社の精神的な舵取りも任され、同社の発展にも貢献した。キニンヴィ蒸留所が1990年7月4日にオープンした時、当時89歳だったジャネットさんがテープカットを行った。その翌年の1991年、グレンフィディックが50年物を発売するとき、そのセレモニーでシリアルナンバー1番と2番のボトルを詰めたのも、ジャネットさんだった。
当時ロンドンで日本語雑誌の編集長をしていた私は、ソーホーのミルロイズ店のオーナー、ジョン・ミルロイさんの計らいで、そのセレモニーに出席する機会を得た。4代目のゴードン会長とジャネットさんのツーショット写真も撮り、話もさせてもらったが、その会には故マイケル・ジャクソンさんや、同じく故ウォレス・ミルロイ氏も出席していて、今となっては懐かしい思い出である。
キニンヴィはスチル9基を擁する蒸留所で、まったくシングルモルトはリリースされなかったが、2007年に17年物が初リリースされた。これはジャネットさんが当時住んでいたダフタウンの家の名前をとって、ヘーゼルウッド・リザーブとして出された。キニンヴィという蒸留所名を冠したシングルモルトがリリースされるのは、もっと後の話である。
そのジャネットさんは2012年4月に110歳で亡くなった。これは当時、スコットランド最長寿の女性で、その死に際してはスコットランド政府の首相、アレックス・サーモン氏の弔辞が寄せられたほどだ。ちなみにキニンヴィのオープニングがアメリカの独立記念日の7月4日となったのは、独立・自由を重んじるグラント家の伝統が、アメリカの独立宣言に書かれた精神と一緒だったからだという。もちろん、それがジャネットさんの意向でもあったのだ。
グレンフィディック50年のNo.1とNo.2をボトリングする故ジャネットさん。 ジャネットさんと4代目のゴードン会長。 左が兄の故ウォレス・ミルロイ氏、右が弟の故ジョン・ミルロイ氏 一覧ページに戻る