2020-10-28
スコッチ【0010夜】女性にも大人気のモンキーショルダー
年齢とともに40肩、50肩に悩まされるが、私の場合66を過ぎて60肩に悩まされている。長時間机に座って原稿を書く作業が続いているからだと思うが、これで思い出すのが、モンキーショルダーだ。モンキーショルダーとは麦芽づくりの職人(モルトマンと呼ぶ)が患う肩の痛みで、かつては職業病のひとつと言われた。長年、木製のシャベルを使ってコンクリートの床に広げた大麦を4時間おきくらいに撹拌する作業を続けていると、いつの間にか肩が胸のラインよりも前方に出て、その歩く姿が猿に似ていることから、こう呼ばれたのだとか。もちろん、かなりの痛みを伴うものらしい。
このモンキーショルダーをブランド名にしたのが、ウィリアム・グラント&サンズ社のブレンデッドモルトである。2000年代頭に登場したこのウイスキーは、グラント社が所有するグレンフィディック、バルヴェニー、キニンヴィの3つのモルトウイスキーがブレンドされていることで話題となった。なぜならば、それまでキニンヴィが、このような形でボトリングされることがなったからだ。キニンヴィは1990年7月4日にオープンしたグラント社第3のモルト蒸留所で、現在に至るまでほとんどボトリングされることのない幻のモルトウイスキーだからだ。
ボトルデザインは、そんな古い業界用語とは反対に、3匹の猿をシンボルに使い、その猿の姿が可愛らしいと女性にも大人気となった。もちろんスイートでフルーティ、さらに飲みやすいということもあって、発売10年で世界中のバーに販路を拡大し、多くのバーで、カクテル材料としても用いられるようになった。今ではジョニーウォーカーのブレンデッドモルト、グリーンラベルを抜いて、このカテゴリではNo.1ウイスキーとなっている。モンキーショルダーは今となっては死語となってしまったが、まさかこんな形で蘇るとは…。60肩(もうじき70肩だ)の痛みに日々悩まされながら、ついついそんなことを思いだしてしまった。
イギリスの飲料業界誌「ドリンクス・インターナショナル」のリサーチでは、スコッチ部門「ベストセラー」、「Top トレンディ」で1位を獲得している。 一覧ページに戻る