2020-10-21
スコッチ【0007夜】グレンバーギーと静かなる男の知られざる関係
バランタインのキーモルトであるグレンバーギー、ミルトンダフ、グレントファーズの3種のシングルモルトが今年も発売されたが、それぞれの蒸留所のアイコンとなるイラストが小さく描かれているのに気が付いた人はいただろうか。ミルトンダフは蒸留所の敷地内に今も残る水車がアイコンで、グレントファーズはシンボルとなっている双塔のパタゴ屋根が描かれている。それではグレンバーギーのそれは何だろうか。
描かれているのは2階建ての石造りの小さな家で、17世紀~18世紀のスコットランドの典型的な建築様式である外階段がついている。しかし、それだけだったらシンボルとして採用された理由にはならないだろう。なぜなら、グレンバーギーに限らず、今でもあちこちにこの手の建物が残っているから。さらにグレンバーギーがこれを選んだのは、ここがかつて保税官の住まいとして使われていたからだが、もうひとつ、20世紀初頭にここの税史を務めていたのが、モーリス・ウォルシュだったからである。
モーリス・ウォルシュと聞いてピンときた人は相当なアイルランド通、映画通だと思うが、実はモーリスはアイルランド生まれの作家で、作家として有名になる前の一時期、保税官としてグレンバーギーに駐在していたのだ。そのモーリスの代表作のひとつが、『静かなる男』。本作が有名になったのは、ハリウッドの巨匠ジョレ・フォード監督が、これを映画にしたからだ。
主演はフォード一家のジョン・ウェインやモーリス・オハラで、映画の全編はフォード監督の故郷であるアイルランドのカネマラ地方で撮影され、1952年に公開された。アカデミー賞にもノミネートされ、たしか監督賞と撮影賞を受賞しているはずだ。モーリス・ウォルシュが亡くなったのは1964年のことだが、今でも彼のファンが、わざわざスコットランドのグレンバーギーを訪れるのだという。
ぜひボトルのイラストと見比べていただきたい。 一覧ページに戻る