2020-10-16
スコッチ【0005夜】ストーカーはもともと鹿狩りの意!?
スコッチのラベルにシンボルとしてよく使われるのが牡鹿(スタッグ)と、国花のアザミの花である。牡鹿は古来より王者の印とされ、特に12本の枝角(トゥエルブポインター)を持つ牡鹿は、ロイヤルスタッグとして、高貴さや勇者の象徴とされてきた。このスタッグをラベルに使用していることで有名なのは、何といってもグレンフィディック(ゲール語で鹿の谷の意)だが、他にもダルモアやグレンギリ―もシンボルとして使っている。
では、その鹿を狩るディアストーカーをラベルに使っているスコッチはあるのだろうか。かつてブレンデッドスコッチのベルが、スコットランドの伝統スポーツであるカーリングや、この鹿撃ちをラベルにあしらったことがあるが、定番商品ではない。ディアストーカーという名前をそのままブランド名にしているのが、ボトラーズのアベルコ(Aberko)が出しているボトルで、中身はスペイサイドのバルメナック蒸留所のシングルモルトである。
ライフル銃を手にしたハンターが、そのままラベルに描かれているが、スコットランドでの鹿撃ちはディアハンターではなく、ディアストーカーと呼ばれる。ストーカーとは忍び寄る者の意だが、これは現在別の意味で使われていて、そちらのほうが一般的だ。鹿撃ちは犯罪ではないが、ストーカーは犯罪である。木のほとんど生えないスコットランド(ハイランド地方)では鹿から身を隠すものがなく、昔から鹿狩りの際は岩影や草に隠れるようにして、地べたを這うようにして鹿に近づいていった。だからハンティングではなく、ストーキングなのである。
その時に着用したのが木の皮や草花で染色した、ハンティングタータンだ。それはともかく、どこかでこのディアストーカーのボトルを見かけたら、ぜひ飲んでみてほしい。中身はすべてバルメナックで、実はバルメナックのシングルモルトはこれしかなく、オフィシャルでは一切出ていないのだ。
これが鹿撃ち(ディアストーカー)スタイル。 一覧ページに戻る