2020-10-14
アメリカン【0004夜】大統領選とジェファーソンのワインボトル
今アメリカの大統領選がたけなわだが、大統領候補、副大統領候補の公開討論会の時に候補の後ろに見えているのは、アメリカの独立宣言の一文だろうか。1776年7月4日に採択されたアメリカの独立宣言は、トーマス・ジェファーソンが起草したものだが(トーマスは後に第3代大統領となっている)、ジェファーソンといえばワインの世界では大変有名で、1985年にロンドンのクリスティーズに出された通称“T.Jボトル”は、当時のオークション記録を塗り替え、その後30年近くにわたって、ワイン史を騒がす事件となっている。
トーマスは大統領になる前の4年間、フランス公使としてパリに滞在し、数々の世界のワインを収集した。そのうちの1本が1784年のシャトー・ラフィットで、これが先のオークションで1本約3,000万円の値段で落札されたのだ。その後も“T.Jボトル”は50本近くが市場に現れ、そのうちのシャトーディケムは本物という説が根強いが、件のラフィットは偽物との説も根強い。酷評するワインジャーナリストは、“世界最高値のサラダドレッシング”と評するほどだ。オークションで鑑定にあたった当時のマスター・オブ・ワインは、テイスティングした上で本物と判断を下している。
まあ真偽はワインの専門家に任せるとして、今はオークションで高値がつくのはワインではなく、ウイスキーである。昨年のロンドン・クリスティーズのオークションでは、ついに1926年蒸留のマッカラン60年物に、史上最高値となる1本約2億円の値段がついた。今年8月の香港のオークションでは発売間もない、サントリーの山崎55年が8500万円で落札された。この秋のクリスティーズの目玉も、この山崎55年と、そして軽井沢のセットだというから、墓場の下のジェファーソンも、びっくりの高値だろう。
左がクリスティーズのオークションで約2億円の値が付いた1926年蒸留、86年瓶詰めのマッカラン。ラベルを描いたのはイタリア人画家のヴァレリオ・アダミ。 一覧ページに戻る