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審査員
岡部 宏彦
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洋酒部門
焼酎部門
岡部 宏彦
オフィスH&M 代表/ウイスキーレクチャラー
TWSC審査の前後で、仕事やプライベート上での新しい気づきや変化はありますか
自分自身にとっては大変な栄誉だが、周囲からも「ただの酒飲みもここまで来ればたいしたもの」と評されるようになった。そして嗅覚について学び直すことになった。生理学的なメカニズムや、環境省の臭気判定基準などを調べて詳しくなった。香りを表現する難しさを思い知ったので、語彙力を身につけるべく、香りを感じるたびに、形容する言葉を探すのが習慣になった。
ブラインド審査時の感想や、心がけたことをお聞かせください
生産者や出品者のことを思うと重責を感じてしまい、とても神経を使った。楽しさを感じることはなかった。審査期間中は、ほかの飲酒はほとんどしなかった。ブラインド、かつリモートでの審査方法は、先入観や他者の意見に左右されず、公平であると思う。ただ、時間があるばかりに決断ができず、延々と悩み続ける苦しさがある。私は各フライトに2日間をかけた。ラベルの順番どおりに1回、翌日ラベルを見ずにランダムな順で2回目を実施した。ラベル#1が再び最初に来ないようには配慮した。2回とも大きな差異はなく、採点に自信を持てた。まれに評価の異なるものがあり、それらについては、微量に残したサンプルで、極めて慎重に3回目の審査を実施した。集中するため、メモは取らず、つぶやきを録音して文字に変換した。このあたりはリモート審査の利点だった。嗅覚疲労を考えると、1フライトに8品目がギリギリ限界だと感じた。
審査を通じて出会ったボトルで、印相的なエピソードを教えてください
高級ブレンデッドウイスキーの凄さを思い知った。これまでは、ブレンデッドは大衆向け量産品の印象で見下しがちだった。シングルモルトとは異なる、ブレンダーの技能やブランドマネジャーたちの真剣な取組みが感じられた。今後は生産者の英知や努力を感じつつ、じっくりと味わいたいと思う。またジャパニーズジンを担当したが、生産者の間でもジンの魅力が正しく理解されないまま、生産、出品されているものがあるように感じた。自分もたいした自信はないが、ウイスキーとは違った日本の洋酒文化の浅さを感じる部分だ。英国でも最近になってのことではあるが、日本のジンについても何らかの定義付けがないと、フレーバードアルコールならなんでもありのジャンルになってしまう気がする。
結果発表後に受賞ボトルを購入、または飲食店などで飲まれましたか?またその時に感じたエピソードをお聞かせください
TWSCセミナーで各種いただいている。審査したボトルをあらためて飲むと、すでに懐かしく感慨深い。土屋さんのコメントと自分の下した評価を比較できるのは有意義で、おおむね似通っているようなので自信を深めているところだ。ただ、自分の採点には、やや無難な中心化傾向があることを知った。勇気を持って、明確な点差をつけるべきだと感じることとなった。
TWSCに対して期待していること、今後の課題を聞かせてください
昨今、限定ボトルや記念ボトルが目につくが、一般の飲み手としてはそれらを飲む機会には恵まれず、受賞ボトルの写真を見ても絵に描いた餅でしかない。入手しやすい量産品のカテゴリーを設けられないだろうか。「ここ3年間にわたって毎年10万本以上出荷しているボトル」といったような条件で。 焼酎部門設置の主旨は、業界の国際市場でのプレゼンス向上にあると聞いたため、洋酒飲みの代表としての評価をした。「自分が焼酎初体験の外国人だったら…」というスタンスだが、審査した限りでは、国際市場で存在感を示そうという、主張の強いものが少ないと感じた。出品者は違う意図で出品しているのだろうか。今後は、アルコール度数でカテゴリーを分けるとの計画を目にした。これはぜひ実行するべきで、25度が世界で広く理解されるには、かなりの年数を要すると思う。